妄想世界に屁理屈を。
「あと一つは、白龍家です」
「…っ、」
苑雛くんの顔色が変わった。
衝撃を受けたように顔がこわばる。
知ってる家?と聞こうとしたが、苑雛くんの方が速かった。
「能力は?」
「邪眼です」
あれ、それじゃあ今日子ちゃんと変わらないじゃないか。
「私たちなんかが足元にも及ばないくらいの邪眼なんです」
「…それは、力が強いということか?」
鸞さんが聞けばこくんとうなずいて。
「白龍家は最高級の邪眼の家。
でもそれだけじゃないんです。
白龍家には、他の家にはない特徴がふたつあります」
指を二つ立てて、一つをぱたんと折る。
「一つは能力です。
本気になれば薬を使わずに一一覚醒せずとも殺せるのと、悟(サトリ)という能力です」
「悟?」
「はい。
思春期になると邪眼の能力は強くなるんですが、その時に人の心を読むことができるようになるんです」
「それは違うよ」
苑雛くんの否定に、一同がみんなそちらを向く。
「神格の高い神々は相手のことを霊力の質で見抜くことができるでしょう?
それと一緒なんだ。
もっとも半神とかじゃない限り、人間に質なんて滅多にないから、多分それが人の心を読むサイコメトラー的な能力になって現れてるんだと思うよ」
「なんじゃ…?お前やけに食いつくのぉ。
タマの力を浴びたとはいえ、ただの人間じゃぞ、神様じゃないのだから、神格が高いわけがないじゃろう?」
そうだ。
確かに今の言い方じゃ、白龍家が高位の神格を有してるみたいじゃないか。
俺は神の加護を受けて器という人間じゃないものになってるから高いわけで。
向こうは神様でもなんでもないんだ。
「あ…そうでした。ごめんなさい我が主」
「苑雛らしからぬミスじゃなあ。疲れとるのか?」
鸞さんの言う通り、なんだか今日の苑雛くんはおかしい。