妄想世界に屁理屈を。
少しの違和感を感じながら、とりあえず白龍家のことを頭に詰めようと思った。
「で、白龍家の特徴もう一つは?」
「……」
今日子ちゃんは、また悲しそうに笑って。
「わわっ!?ちょ、今日子ちゃん!?」
セーラー服のスカートをいそいそとまくり、白い太ももをあらわにし始める。
靴下も何もはいていないから、すらりと艶かしい素足が晒されていく
「……あ…」
「なん…っ、なんじゃ、これ…」
赤や黄色や青の、時間の経過によって変わっていく痣のあと。
鋭い切り傷のあとは瘡蓋になっていたり、白い跡として残っていたり。
女の子とは思えないボロボロの足だった。
「………村では邪眼の人権はない。
薬で自我を曖昧にして、逆らおうものなら村全員が敵になる。
よくわからない殺しの依頼や、とにかく自我がなくなる恐怖。
とくに、“私は薬が効きづらいから”自我が残ってて、反抗して一一容赦なく傷つけられるんです。
こんな世界がなかったらって、何回も思って…それで、弥生を連れて逃げ出した。
みんな失敗に終わって傷つけられる、それの繰り返し」
独白に近いそれで、推測した。
俺があの夜出会ったとき。
あの時は、ちょうど脱走の真っ只中だったのだ。
妹の弥生ちゃんを連れ、靴のない状態で山道を駆けて。
その地獄のような村を逃げようと。
「一一それが、白龍家には一切ないんです」