妄想世界に屁理屈を。


少しの違和感を感じながら、とりあえず白龍家のことを頭に詰めようと思った。


「で、白龍家の特徴もう一つは?」

「……」


今日子ちゃんは、また悲しそうに笑って。

「わわっ!?ちょ、今日子ちゃん!?」


セーラー服のスカートをいそいそとまくり、白い太ももをあらわにし始める。


靴下も何もはいていないから、すらりと艶かしい素足が晒されていく


「……あ…」

「なん…っ、なんじゃ、これ…」



赤や黄色や青の、時間の経過によって変わっていく痣のあと。

鋭い切り傷のあとは瘡蓋になっていたり、白い跡として残っていたり。



女の子とは思えないボロボロの足だった。



「………村では邪眼の人権はない。
薬で自我を曖昧にして、逆らおうものなら村全員が敵になる。
よくわからない殺しの依頼や、とにかく自我がなくなる恐怖。

とくに、“私は薬が効きづらいから”自我が残ってて、反抗して一一容赦なく傷つけられるんです。

こんな世界がなかったらって、何回も思って…それで、弥生を連れて逃げ出した。

みんな失敗に終わって傷つけられる、それの繰り返し」



独白に近いそれで、推測した。


俺があの夜出会ったとき。

あの時は、ちょうど脱走の真っ只中だったのだ。



妹の弥生ちゃんを連れ、靴のない状態で山道を駆けて。




その地獄のような村を逃げようと。



「一一それが、白龍家には一切ないんです」




< 495 / 631 >

この作品をシェア

pagetop