妄想世界に屁理屈を。
「白龍家の当主は代々シンデレラと呼ばれてます。
原作のシンデレラが邪眼だったという説や、村に囚われてるため籠の鳥、また白龍の女の子の圧倒的な美しさからシンデレラと言われてるんだそうです。
まあ今シンデレラは不在みたいですがね…」
「不在?白龍は絶えたのか?」
「まさか!白龍を絶えるなんてそんな…
違うんです。
今どうやらシンデレラは脱走しているみたいで……」
「ほぉ?脱走なぞする意味があるのかの?
だって、恵まれとるのじゃろう、そのしんでれらとやらは」
夢を見るような、憧れるような目で話していた彼女を思い出す。
虐げられることもなく、あがめられて。
あまりの辛さに、足がボロボロになるまで妹を連れて逃げようとしたんだ。
白龍家はずっと恵まれてるようだけど……朱い髪の少女のせいで。
「いいえ」
はっきり否定をして遠い目をしたと思ったら、彼女は口を開いた。
「たぶん、私たちよりも辛いと思います。
覚えてますか?白龍家の、血を絶やすなというお告げを。
あの村は、それを一一近親相姦という形で実現しているんです」