妄想世界に屁理屈を。

…そうか。
さっきそんな話をしてたっけ。


「ぷはぁ…ありがとう僕!」

「苑雛でいいよ、おねえさん」

「エンスウくん?変わったお名前ですね…」


仲良くなってる二人を烈火のごとき瞳で見つめてる鸞さんだった。


「あの…無理させちゃったみたいで…」


吐かせてしまった。

もう少し俺が邪眼の事を知ってたら、こんなことにはならなかったのに。

「あ、大丈夫ですよこれくらい…日常茶飯事なので、吐くのあんまり辛くないんで」

たしかに吐いたにしては立ち直りが早い。

生理的に流れる涙もないし、うまい吐き方があるのかも。


「さてと…なんの話でしたっけ?
…ああ、今のシンデレラの話か。

その双子の兄との子が男の子だったらしいんですね。
シンデレラって女の子しかなれないんです。

なんでかというと、邪眼は基本女の子にしか現れないからです。
だから、男の子ではなく女の子を産まなくてはならない一一しかし、シンデレラは男の子だった。

当然次の子を産まなきゃならないんですが、彼女はやらかしてしまったんです。


どうしても実の兄と関係を持ちたくなかったみたいで…近親相姦を儀式というんですがそのときに、その……兄を殺してしまったんです」



「…え?」


「…あくまで人伝いに聞いたものですがね。
そのあと村は困り果てて、比較的力が強いと言われる日向家と子供を作らせようとしたんですって。

それを拒んで、シンデレラは逃亡。

息子を村に残して行方不明なんです」



呆然としてしまった。



現代で起こってるとは思えない。



近親相姦に殺人に暗殺に、逃亡。


彼女たちはそんな非現実と隣り合わせで生きていたのだ。



「……」




そして、信じたくない事実ではあるが一一シンデレラの件は、間違いなくアカネのせいなのだ。



アカネが一言、子を絶やすなと言ったから。

タマ大好きなアカネが、どうしてもタマを復活させたかったから。




だから、こんなことになってるのだ。








< 499 / 631 >

この作品をシェア

pagetop