妄想世界に屁理屈を。
一人になりたい一心で、ドタバタと廊下を踏みならして歩く。
黒庵さんの部屋の襖を開けて、薄暗い中を確認。
「…やっぱり、来ると思ってました」
そして、にっこりと笑うお花を見つけた。
「一一へ?」
上まで続く本。
独特の心地よい紙の匂い。
黒髪にお花畑な雰囲気のお父さんこと驪さん一一
…いや、待て待て待て。
今俺は間違いなく黒庵さんの部屋の襖を開けたはず。
なのに、なんで驪さんの書斎になってるんだ?
「ちょちょいと黒庵の部屋とここを繋げたんです。ワープ的なやつですね!」
ふわふわ言うことか、それ。
息子の部屋になんていう改造をしてんだ。
「え、な、なんで」
一人になりたかったのに。
そう言おうとして、驪さんの笑みが消えたことに気づいた。
「一人になんか、させませんよ。
私の大事な子供が悩んでるんですから」
そう言ったかとおもうと、いつの間に、と表したくなる速さで、でもそっと。
俺より小さい背丈で、包み込むように抱きしめてきた。
ぼんやりと、人肌独特の暖かさ。
芯から温まっていくような、そんな心地よさ一一
全てお見通しなのだ、と、理解した。