妄想世界に屁理屈を。
そのあと、彼女を拉致した現場に戻って、弥生ちゃんを呼んだ。
『…邪眼の移し替えなどできるのか?』
『別に彼女たちの体をいじるわけじゃないですからね。
下位の神々は高位の神々の命令には逆らえないことを利用して、弥生ちゃんの中に入ってる“タマの一部の邪眼”という神々に映ってもらうんです』
『……そうか』
どうやら、邪眼は一個の神々らしい。
詳しいことはあんまりよくわからないけれど、彼女たちの肉体には神々が宿ってるってことになるのかな。
ちょうど、俺でいうアカネみたいな。
ふわふわの癖っ毛の白髪に、無表情。
死んでるみたいな弥生ちゃんは、それでも姉は愛してるのか一一愛しそうにほおをすり寄せていた。
『弥生。お姉ちゃんね、弥生が辛い思いしないで済むならなんだっていいの』
『…?』
『だって、弥生は私の一番の希望なんだから』
……嫌、だった。
結局俺らにできたことは、片方を殺して生かすことなんて。
こんなの、ハッピーエンドなんかじゃない。
『今日子ちゃん、今自分が何しようと思ってるかわかってるの…?』
『もちろん。
もし将来優しいこの子が負い目を感じたりとかしても、私が後悔してないんだからいいんです。
エゴの塊なんです、私は』
違うんだ、そんな綺麗な目で言わないでくれ。
死を選ぶようなものなのに、そんな嬉しそうな顔で言わないでくれ。
『……鸞さん』
『なんじゃ』
『こんなの、神様なんかじゃない…っ』
神様は、もっと、もっと。
もっと一一なんだっけ。
この日、今日子ちゃんの眼の色が濃くなって一一弥生ちゃんの眼の色が薄くなった。