妄想世界に屁理屈を。
「でも、ほんとにゆーちゃんが気に病むことないんですよ。
確かにあの子の非情さにはたまに目を覆うものもありますが、少なくともゆーちゃんに罪はありません。
それに腐ってもあの子は神様です。
人の願いが生んだ存在です。
だからまあ、あの子の非情が誰かを救ったと思えば少しは…」
そこまで言って、何かに気づいたように止まった。
疑問に思って視線をたどれば、俺の額をまじまじと見つめている。
ん、なにかついてたかなぁ。
「……あの子は……そうか、だから…」
「?
どうしたんですか?」
一瞬にして驪さんは顔を青くして、手で頭を抱えてしまった。
何かとんでもないものが俺の額にあったのだろうか、と不安になる。
すると驪さんはぱんっ!と勢いよく襖を開いて。
「スズゥー!」
なぜかスズを呼んだ。
当然同じ邸内にいるスズは反応し、「はーい!ただいまー」と元気よく応えてくれた。
ドタバタと走る音が徐々に近づいてくる。
襖がさっきの驪さんよりも勢いよく開かれた(どうやらここの人は襖の使い方を知らないらしい。さっき黒庵さんの部屋を異空間に繋げてたし)
「何の用でしょう驪さま!…って、え、ゆーちゃんもいたの?」
驚いたようにこちらを見てから、役に立つのが嬉しいのかやけに機嫌よく跪く。
犬なら尻尾を振ってそうだ。
「あのねぇスズ。ちょっと悪いんですが私にハサミを貸してくれませんか?」
「へ…?ハサミ…ですか。わかりました 。用途は、紙用ですか?布用ですか?」
そんな日常的なお願いにも従順なスズは律儀に答えたが。
「あ、違います。その黒庵の糸から出した、神器のほうがほしいんです」
急にSFなお願いになった!?
確かにそのスズの首につけている糸からはなんでも取り出せるし、この間もハサミを取り出せたけれど。
一体何を切るんだろう。