妄想世界に屁理屈を。
「…よし、きった!」
やけに明るいその声に、体の痛みを確認するも、どこも切られてはいないようだ。
じゃあ何を切ったのか?
「ごめんなさいゆーちゃん。もう目ェ開けていいですよ」
体から重みが消え、驪さんが降りたのだとわかる。
「…?」
意味がわからず、疑心暗鬼になりながら目を開けて、上体を起こした。
「…な、何するんですか!!」
ようやく恐怖やら怒りやらが出てきた俺は、なぜかいつも通りにニコニコしてる驪さんを睨んだ。
い、いきなり刃を人に向けて脅かすなんて!
可愛らしい見た目からは想像つかないことするんだな…!
「ごめんなさい…でも、あなたに認識されたらどうなるかわかんなかったんです」
あんぐりとしてるスズに、お礼を言ってハサミを返しながら。
「…ほら、これならみえるでしょう?」
掌を開いて、中に掴んでいたものを見せてくれる。
そこには、真っ白の細いミシン糸のような糸があった。
「…糸…?」
「はい。あなたの額に通ってたものです」