妄想世界に屁理屈を。
◇◇◆



「一一…それを信じろっていうのかよ」



黒庵の眉が小さく歪む。

いつも不機嫌そうなのにそんな顔をされては、不良みたいだ。


「信じろもなにも、真実なんだから。
それともなに?

君は目の前に証拠があるってのに、逃げて他の道を探そうとするの?バカもそこまでくれば立派だね」


「そうじゃなくって」


ボリボリと頭を掻きながら。


「もしそれが本当なら…まあ本当なんだろうけどさぁ
てめぇなんで隠してた?」

「なんでってそれは、」

「なんで俺様に相談しなかったんだ?」



ふざけんなぶっ殺す、と言いそうな顔して、とても優しいことを言う。


「文字通り自分の体を小さくしてまで、てめぇはなんで隠してた?
俺だって随分タマやアカネにあげちまったからその時は少なかったけど、ちょっとは霊力貸せたぜ?」

「…君はバカなんだもん。霊力貸せって言ったら、それこそアカネにバレちゃうよ」


嬉しさを押し殺して、必死に笑う。


だから君は好きだ。


「…で、俺様はどうすればいい」


「あぁ、あのね、僕は神々との契約を破棄しようと思うんだ。
もうそろそろ霊力無くすの苦しいしね。

だから、君にはあの家を守ってほしい。
タマ復活したらアカネもきっと喜ぶし」


「…本当に復活すんのかよ、来年だろ?計算だと」


「するでしょ、神々のプログラムは絶対なんだから」

悲しいほどに、性質は変えられない。


「…毎年一羽ずつ。休んで蘇っていく。
乳海撹拌一一インド神話みたいに、平等に。
その一年ずつのズレがこんなことになるなんてね」


早く蘇ったものは、早く休んだことになる。

一番最初に休んだのは、我が主…鸞。
二番目が僕。
三番目が黒庵で、四番目がアカネなのだけど、アカネは実質僕より少し前に霊力不足で眠ってしまった。


ちなみに、タマの事件は僕が休む前だった。

だから、あげてしまった。



シンデレラを守るための霊力を。



「…温泉の神にまで頼むことないだろ」

「だって経営が成り立たないじゃん?」

「抜かりねぇなぁ」


鳳凰の犯した罪の後始末は僕が。

尻拭いは僕が。


だってそれが、頭の役目でしょう?



記憶を見た限り、確証が持てた。

思い出せた。




「…まさかてめぇも記憶喪失だったとはなぁ」





「…記憶をなくしてたことも忘れてたよ」



頭としての失態である。本当。

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