妄想世界に屁理屈を。
「でーも!
苑雛、アカネの記憶を盗むのはどうかと思いますよ?」
ビシッと指を指され、嫌な気がして腕を確認する。
腕に巻いていた、ゆーちゃんとつながるあの糸が、跡も残らず消えていた。
「……。
き、ったんですかお父さん…」
全く気がつかなかった。
僕そういう探知とかは苦手なんだよなぁ。
そういうのは武闘の黒庵やミサキくん、あとは霊力の検索等が得意の我が主などだ。
「はい、斬りました♪」
「ゆーちゃんの心情に変化がみられなかったのですけど…」
「言わずに斬りました」
「…ゆーちゃんびびったでしょうね」
「次こういう事をするときは、もっと糸の霊力をゆーちゃんに似せて作ってください。
だいぶゆーちゃんのにおいに紛れますから」
「…善処します」
…やはり、お父さんにはかなわない。
最高神だから、と言われればそれまでだけど、やはり息子としては越えたいのだ。
まあ越えたくないという思いもあるんだけど。
「…じゃなくって!
兄弟とはいえ勝手に記憶を盗むのはよろしくないですよ!
もうやっちゃメ!ですからね」
ぷんぷんと腕を組んでから、めっ!と指で制してきた。
お父さんの目的は怒ることだったのか。
「はぁい、ごめんなさい」
首の後ろをかいて、素直に頭を下げた。