妄想世界に屁理屈を。
「でもだいぶ説明が省けたなぁ…そこのスーツくんありがとー」
ニヤニヤと笑いながらお礼を言うも、ミサキくんは眉ひとつ動かさない。
つまんねぇの、と小さく呟いて。
「天若日子はねぇ、下照姫(シタテルヒメ)っていう女に骨抜きにされちゃうのね?
自分には大国主から国を取り返すっていう役目があるのに、下照姫に溺れやがったの。
でぇ、アマテラスが鳴女(ナキメ)という女を遣わせて、任務を促すの。
だけど天若日子は、それを射殺してしまう」
うわ、社会人として一番やっちゃいけないやつだ。
“あ…!!”
アカネが何かを思い出したように叫んだ。
「どうしたの?」
“お、思い出した…!どっかで聞いた名前だと思ったら…お前…!!”
なんか急に怒ってる。
どうしたんだろう、と中のアカネをなだめようとして。
異変に気付いた。
肌から骨がむき出しになったような角が、淡い青色に発光している。
暖かさそうな、でもどこか冷たい一一そんな不思議な色に。
天探女は閉じていた目をゆっくりと開けて、ため息交じりに言った。
「…あー、わかった。なぁんかいい匂いがすると思ったらなるほどねぇー。
キミたち、鳥の最高神か。
面倒な奴らに捕まっちゃったなぁ、困った困った」
「え、本当どうしたの?…って、わっ!?」
天探女に近寄ろうとしたら、アカネに無理やり意識を飛ばされた。
息が途端にできなくなり、何事!?と俺の脳内は大騒ぎ。
「おい!ようやくてめぇを思い出した!!」
アカネが俺の声を勝手に使って、ビシッと天探女を指差した。
なにやらとっても威風堂々としていて殺気立ってるけど、本当どうしたんだ?
「お前…雉の神である鳴女を殺せ、と天若日子に指図したゲス野郎だな?」
「ご名答ー!
やっばい鳥大好きな最高神としては怒る?怒っちゃう?」
キャハハッ!と女子高生みたいにキャピキャピ笑って、アカネを挑発する。
…なるほど。雉か。
鳥の仲間である雉を殺せと命じた張本人なわけか。
だから仲間大好きなアカネはこんなに怒ってる。
「怒るも何も…お前の意図がわかんねー!
だってほっといてもいいじゃんか、女にうつつ抜かして任務ほっぽる最低な野郎を庇っても結局は死ぬって読めてたんだろ?」