妄想世界に屁理屈を。




「……なるほど…」


隣のスズが小さく呟いた。


(なにがなるほどなの?)


「スサノヲっていうなら、大分納得がいくんだよね。
この謎の現状も、全て」


(じゃあ信用できるってこと?)


「うん。少なくともこの件だけはね

天照が大国主に怒って、国を取り戻そうとしたのが元凶だって言ったでしょう?
その大国主ってね、スサノヲの義理の息子なんだ。
奥さんがスサノヲの子孫なの。

で、スサノヲの命令で国を制定してたってわけ」


(あー!だからスサノヲが自分の手の中のものに国を納めさせようと…ってことか!)

「そう。
天之忍穂耳が死ぬのをわかってて、そう言えって天探女に命令した一一とぉっても理にかなってる」


じ、と天探女を見つめるスズ。

同じ、なのだ。

彼女と、彼女は。




「…あーと、まぁねー?そーゆーことなんだけどぉー
今回も、そーなわけね」

「そうって?」

アカネが問えば、顎でクイっと俺らの奥を指す。


(…あ!!)


思わず叫んだ。



そこには、白髪の男に抱かれた百瀬がいたから。



緑色の目に、ふさふさとした髪の毛一一わかった、あの山であった白狐さんだ。


お姫様抱っこされてる百瀬の瞳は閉じられていて、眠ってるのだとわかる。

その格好は制服のままだった。


(ちょ…ど、退いてアカネ!またあとで渡すから!!)

「あ…おいっ」


無理やり体を取り戻して、はあはあと息を整えて。



「百瀬!」

腹の底から叫んで、だっと駆け寄ると、背の高い白狐さんが少しかがんで近づけてくれた。


「だ、大丈夫なの!?」

「ああ、眠らせただけだ」

「へ、変な薬」

「…使っておらん。ただの術さ」


色の白い顔は、メンドくせこいつと言いたげに歪んだ。だって心配なんだもん。


“同じって…百瀬ちゃんになんかしたのも命令なのか一一って、体取られてんだった!スズ!”

…取られてるってあのね、俺のだからねこれ?

まだ体のある感覚が残ってたみたいだ。

スズに叫んで通訳を頼む。



「はい!アカネ様!喜んで!

おい天探女、アカネさまが今回の百瀬ちゃんの件もそうなの?って聞いてるよ!」

「……状況を説明するのが普通じゃなぁい?従者らしく、さ」

そりゃそうだよね、何が起きたかだよね。

目の前で俺とアカネが入れ変わったんだ。

意味のわからない人には疑問しかない。



「だって君も従者…」

「さっきは主って言ったけど、僕認めてないもーん、あの人」

「あっそー!イライラするなぁもう!
ちなみに私はアカネ様を心の底から尊敬してるからね!」

地団駄を踏んで、プンプンと怒るとやけに幼かった。



「あれのなかに体がないアカネさまが入ってるの!!で、たまに体を借りたりするの!
今はゆーちゃんだけどね!
はい説明した次あなた!!」


「ありがとー従者さん♪さすが幼女、単純ー」

「なっ…!!あなただって!」

「僕は大人の姿が小さくなってるだーけ。
大きさは自由に変えられるのー」

「お、おっぱいは」

「ああこれサラシで抑えてんの。揺れるのうざいから」

「殺して荼枳尼天さまぁああ!!」


うわぁああんっと、荼枳尼天の体に抱きついて泣き始めてしまった。

うわぁ悲惨…全てのコンプレックスがこいつに覆されてる…


「今見せてあげよーか?」

「ふぇ…やめ…ぬ、脱がないでよぉおおー!」


満面の笑みで着物に手をかけた天探女に怯えて、荼枳尼天の黒い衣装に顔を埋めた。

おーよしよしと頭を撫でる荼枳尼天、優しいな。
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