妄想世界に屁理屈を。


「うるさい!兄さんにBLの価値がわかるの…いや、わかって!」


そう言って一回部屋にくるりと戻って、ドサドサと本を俺の目の前に落とした。


「秘蔵コレクションだから!服が欲しいなら読んで感想と彼氏を連れてきたらあげる!」


バルスよりも恐ろしい呪詛を叩きつけて、部屋の扉をバタンと乱暴に閉めた。

つう、と生暖かい鼻血が垂れるのを感じた俺。


“…お前の妹…腐ってんのか?”

「絶賛反抗期&腐中」

“なんてゆーか…まぁドンマイ、だな”

「読まなきゃダメなの!?」

“……頑張れ”

「助けっ…アカネ!助けてよ!神様的な力で!」


「…何やってんの、兄さん…」


なぜかドアから顔を出した蜜柑が、汚い未確認生物を見る目で俺を見ていた。

「…神様的な、力…」

「誤解だ!断じて廚二病な訳じゃ…」

「うん、いいよ。どんな兄さんでも受け入れるネコはきっといるから…うん、いいよ。うん。はいこれ…」


悲しそうな顔をして、もう一冊薔薇がいっぱいな漫画を落とした。



前々から壊れかけてた蜜柑との交流が、今はっきりと壊れた気がした。
< 53 / 631 >

この作品をシェア

pagetop