妄想世界に屁理屈を。
「うるさい!兄さんにBLの価値がわかるの…いや、わかって!」
そう言って一回部屋にくるりと戻って、ドサドサと本を俺の目の前に落とした。
「秘蔵コレクションだから!服が欲しいなら読んで感想と彼氏を連れてきたらあげる!」
バルスよりも恐ろしい呪詛を叩きつけて、部屋の扉をバタンと乱暴に閉めた。
つう、と生暖かい鼻血が垂れるのを感じた俺。
“…お前の妹…腐ってんのか?”
「絶賛反抗期&腐中」
“なんてゆーか…まぁドンマイ、だな”
「読まなきゃダメなの!?」
“……頑張れ”
「助けっ…アカネ!助けてよ!神様的な力で!」
「…何やってんの、兄さん…」
なぜかドアから顔を出した蜜柑が、汚い未確認生物を見る目で俺を見ていた。
「…神様的な、力…」
「誤解だ!断じて廚二病な訳じゃ…」
「うん、いいよ。どんな兄さんでも受け入れるネコはきっといるから…うん、いいよ。うん。はいこれ…」
悲しそうな顔をして、もう一冊薔薇がいっぱいな漫画を落とした。
前々から壊れかけてた蜜柑との交流が、今はっきりと壊れた気がした。