妄想世界に屁理屈を。
「…なんだ、恋してるんだぁ、君」
天探女がどことなく嬉しそうに言った。
恋バナが好きな小学生、というような。
「…そっかぁ、そりゃあ悪いことしちゃったなぁー
けどさ、あんたが本当にその子のことが好きなら一一女になった、なんてそれしきのことで諦めるの?引きさがんの?
だっさ」
…そうだ。
俺は百瀬が好きだ。
女になったからとか、恥ずかしいとか、そんなことを逃げに使っちゃダメだ。
女でもいいじゃないか。
俺は俺なんだから。
「その子もさ、僕があんたのことを教えたら、迷ったよ。
悩んで困って、あんたを避けて罵ったよ。
でもちゃんと答えを出した」
「こたえ…?」
「あんたをどう受け入れるかって答えさ」
どくんと胸が騒いだ。
「吉と出たか凶と出たかは、あんたが自分で聞き出しなよ
どっちにしてもあんたはそれを尊重しなきゃダメだよ?
あの子が悩んで出したんだから」
不思議と、彼女の声は耳に馴染んだ。
重みのある、どこか揶揄するような口調…
「言っとくけど、僕は一切変なことは言ってないから。
こう見えてもそこのおばさんよりも恋のキューピットなんだ、僕」
「へ…?」
「…まあいいよ、そこらへんのとこは」
悲しそうに、その幼く見える瞳を閉じた。