妄想世界に屁理屈を。
…同時に。
「あとね、ムカムカするの」
なぜだか、この首元の糸から剣をだしてぶった切ってしまいたくなる。
むしゃくしゃして、大嫌いと言いたくなる。
「それはあれだよー?
やきもちってやつー」
熱くなってきたのか、パタパタと仰ぎながら。
「百瀬ちゃんと今頃仲直りしてるんでしょー?
もしかしたらラブラブになってるかもしれない一一それがいやなんだよあんた」
「っ、」
想像してしまった。
…わかってたのに。
柚邑はわたしと出会う前から、ずっと百瀬ちゃんが好きだった。
そして百瀬ちゃんも。
必死になって百瀬ちゃんのことを考えるあいつに、心が何度傷んだんだろ。
何回斬ってやろうって思ったろ。
だけどそれはできなくて一一
「まあまあー、初恋は実らないって言うでしょー?
そんなに落ち込むなって」
能天気な明るい声が響く。
それにすらイラついて八つ当たりしようとして。
天探女の表情にどきんとした。
体を小さくしてるからどことなく幼女っぽい彼女の顔が、寂しそうにこちらを見つめてるのだ。
でも笑ってはいて、なんだか懐かしんでるような。
…恋のキューピッドだとかよくわかんないことを言う割に、この子はそういう知的な感じがない。
なんて言えばいいのかわかんないけど、こう…恋愛とは無縁そう、というか。
「……あんたはやり直せんだよ。
もう一回、好きな人を作れる」
「じゃあ、」
そんなこと、なんで言うの。
そんな風に言うんならさ。
「じゃあ、天探女はやり直せないの?」
「……」
恋愛をやり直せないなんて、あるのだろうか。