妄想世界に屁理屈を。
「…そうだねー。
ぼくは無理。やりなおせないんだよー
」
もー、困っちゃうというように戯けて。
「失恋したなら、新しい恋を見つければ…」
「うーん、ぼくねぇ、恋ができないんだよー」
「えっ?」
目を見開く。
恋が、できない?
「女じゃなくなっちゃったの、ぼく。
ちょっと色々あってね」
「お、女じゃなくなったぁ!?」
何言ってるのこの人!?
「…だっ、て」
ちろりと乳白色のお湯の中に眠る、わたしのより大きなものに視線を落とす。
「あんまりジロジロ見ないでくれるー?どんだけコンプレックスあんだよ…」
「こんなにおっぱいが大きいのに女じゃないなんて!!
じゃあわたしはなんなの!?」
「や、貧乳も最近は需要あるんだってー。
ちっぱいとかいってさー」
「わたしの理想とする女性像はアカネ様なの!!
アカネ様はバスト89.5なんだから!!」
「うえー、ミリ単位で言えるとかさすがのぼくもちょっと引くぅ…」
「たしか黒庵さま情報」
「なにあの男きも!?」
あれ?なんで胸の話に…。
「あのね、胸がどーこーじゃなくって…
今ぼくは雌雄の区別のない無性の神ってわけー」
「でも、前はあったんでしょ?」
「うん
探女っていうくらいだからね」
じゃあなんでなくなったんだろう。
雌雄がなかったり、逆に両性具有だったりする神々は少なくない。
日本にだってたくさん存在する。
でもそれは大抵生まれつきであって一一女じゃなくなったなんて初めてきいた。
「なんで…」
「あんたのだあいすきな柚邑とおーんなじ」
「柚邑?」
「性別の違う神々がこんなかにいるってことー」
そう言って、自分のお腹をツンツンとつついた。