妄想世界に屁理屈を。


「…あ、兄上…?」



そのうち2つはアカネにとって聞き捨てならないことで。


最後の一つは、驪さんにとってだめなことだったらしい。

呆然と兄を見て、弁解を求めた。
しかし兄は無視をする。


“し、シロとたま!?なんで…隠す必要がねーじゃん!”

「…理由はおいおい話そう。
そうだな、まずはシロのことからだ」


アカネがゴクリとない唾を飲んだのがわかった。


今すぐじゃないことにホッとした顔をした驪さん。


…何隠してるんだろう。

この人あんまり隠し事しなさそうなのに。

でも今はそれより、大事なことがある。
必死に声を荒げた。


「聞いちゃだめだよアカネ!だって…」


だって、壊すつもりなんだ。

それほど重大な秘密なんだ。

聞いていいことなんてない。


“…わかってるよ、でも…ここで聞かないと、私はいつまでシロを探し続けなきゃなんないの!?”


悲痛な叫びに胸が痛む。


シロのことを探し続けてて、彼女はまだ諦めてないのだ。

いい加減決着をつけたいだろう。

鳳凰が健在なため生きてるとは思いたいが、もしかしたらもあり得るのだ。

なんて言ったらいいのかわからなくって、黙ってしまった。


“教えて、もう壊されたっていいんだ。あいつは今どこにいるんだ?”


言ってしまった。

でももう俺にはなにも言えない。



俺だって、関わってしまったからには…夢でアカネの辛さを読んでしまったからには、やっぱり知りたいのだ。


膝を抱えるアカネに、悲しそうに手を伸ばす黒庵さん。

シロを忘れてるように見えて、彼女の心の中はまだ膝を抱えてる。


あのときの海辺のままだ。


赤龍は嬉しそうに懐を弄って、取り出した。





一一真っ白の髪を。



“一一…え?”

一つにまとめられた、どこかで見たことのある美しい七色に輝く白髪。

どよめく鳳凰、身を乗り出す俺。



これは、一体。


< 572 / 631 >

この作品をシェア

pagetop