妄想世界に屁理屈を。
“お、おい…どういうことだよ、これ…”
「見ての通りだ」
「これ…誰の髪の毛なの?」
「わからないのか、シロの一一破壊の、髪だ。
つまりはそう、討ったのは私だ」
「う…たって、え?」
意味のわからない言葉。
だって、そんな、討ったなんて。
“あ…あ…”
討ったなんて、それって、つまり。
“一一いやぁああああっっ!”
「っ、あ、アカネ!」
“嘘だ嘘だ嘘だ!!だって、シロは…は、破壊神だ!そうやすやすとやられるか!”
「お、おちつけ!」
“死んだなんて…そ、そんなの…信じられるわけねーだろ!!嫌だ、そんなの信じない!絶対に!”
半狂乱になって、嫌だ嫌だと叫ぶ。
体のないことが幸いだ、自傷行為をしそうな錯乱っぷりだった。
ちらりと鸞さんたちを見る。
鸞さんが、泣いていた。
ボロボロと目から雫を落として、髪の毛を一心に見つめてる。
知ってたんじゃなかったのか。
いや、知ってても強烈だろう。
彼の一部がここにあるのだから。
苑雛くんはバツの悪そうな顔で、泣きはしないものの唇を噛んでいた。
ふと視線を感じたのでふりかえれば、黒庵さんが複雑そうな顔で俺を一一否、アカネを見てる。
心中はわからないが、シロが死んだ悲しさとアカネの錯乱っぷり。
穏やかでないのは明らかだ。
予想通りの結果に嬉しそうに笑って、赤龍は髪の毛を掴んだ。
「簡単だったぞ?剣で首を跳ねて。破壊神だからと臆病になっていた私が馬鹿みたいだった」
“ひっ…”
「や、やめろよ!なんでそんなこと言うんだよ…アカネが可哀想とか思わないの!?」
「思ったら殺さない」
「…!」
そりゃ、そうだ。
彼の言うことは頭がおかしいのに合っている。
気持ち悪い、いきていないみたいな瞳が輝いていた。
アカネの荒れっぷりが心地良いのだろう。
…こんなとき、人を奮い立たせる鸞さんなら何を言うか考えてみる。
当の本人は泣いていてアカネの錯乱っぷりに手をつけられないみたいだ。
アカネのよき理解者であり、リーダーである鸞さんなら一一
「…アカネ、悲しんだら終わりだよ、怒んなきゃ」
“お、こる?”
「そう、悪いのはみんなあの人だ」
“…っ”
睨んでいるのがわかった。
うまい具合に怒っただろうか。
「聞こう?
壊れてもいいって言ったんだから、最後まで聞こうよ」
“…ゆーちゃん…”
「じゃないと、シロが浮かばれない」
ぴくん、とアカネが反応した。
浮かばれないという単語を選んだのは間違いだったか。
“……本当に、シロは…し、死んだんだな”
確認するように赤龍に問う。
ニヤリと嬉しそうに頷いた。