妄想世界に屁理屈を。


「まさかお前がここまで子供を溺愛してるとはな」

「当たり前でしょう…!彼らは、私の全てです…!!あなたにはわからないでしょうけれど!」

「ふん、わからん。わかるつもりもない」

「シロを返して……一人でも欠けてはならないんです…シロを…!」


泣いた。

綺麗な青い瞳から、これまた美しい涙を流して。


それは最高神でも黒龍でもない。


ただ子供を想う、一人の男だった。



「……」

いたたまれなくなる。

俺は本当に部外者だけど、彼の優しさや子供への愛は痛いほどわかる。

大事な子供の一人みたいなことを言ってくれたし。


だから、これは効果的な嫌がらせだ。


憎み合ってる相手の弱みをつく。

いじめの典型的な一例だ。


「……殺す必要、ないじゃん」

「なんだ人間、聞いてなかったのか?
私は鳳凰を壊したかった。
シロが死ねば、鳳凰は消えて無くなると考えていた」


…あれ?


「でも消えなかった…」

「そうだ、なぜだと思う」

わかるわけないじゃん。

「死ぬ前にシロは、体の半分をあるものに分け与えていた。だから弱っていて私が捕まえることができたのだが」


分け与えていた?


“な、なんで…”


「やめろ!!!」


苑雛くんが突如叫んだ。

「赤龍!頼むからその先は言わないで!!」

「…ふふ、そうか、嫌か」

「なんでもする!僕でできることは…なんでも!」

「なぜそこまで隠したがる」

「守りたいからだよ!!どうせ、その先も言うんだろう…罪のことさえも!そんなこと聞かせたら、」

「ならば余計聞かせよう」


逆効果だった。

何を隠したいのかはわからないが、苑雛くんは真っ青になった。


なんでもするとまで言った。

そこまでの秘密なんだろう。


「話を戻そう。

朱、シロはお前のせいで心が芽生えた。感情が芽生えたんだ。
だからこそ、こんなアホくさい事態になった」


“え?”

そしてそれから、信じられない昔話が始まった。




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