妄想世界に屁理屈を。
「…死んだ?」
彼の名はシロ。
鳳凰の破壊を司る神だった。
いきなり腹の大きい女が目の前で倒れたのだ、驚いて近寄れば、まだ息をしている。
「……」
どうしようかと迷って、助けることにした。
体に触れ、状態を確かめる。
人の姿はしているが、狐であった。
そして、中の子供は死んでいた。
とりあえず近くの山小屋へ連れて行き、介護をした。
「…た、すけ、」
女の意識が戻った。
うなされながら、何かを言っている。
「赤ちゃ…助け……おね、がい……」
自分のことより子供の心配をしている。
親が子供を思う気持ちは知っていた。
何しろ自分の父親は、馬鹿みたいに子供を愛してる。
親にとって子供は宝物だと豪語していた。
「……」
死んでると伝えたら、どうなるだろう。
きっとこの女は自分で命を絶つかもしれない。
それは可哀想だ、と考えたシロは、子供の屍体に自分の霊力の核の一部を入れた。
要するに自分の一部という魂を吹き込んだ。
かなりを霊力を消費したが、彼は満足だった。
きっと愛する彼女も同じ行動を取っただろうと思ったからだ。
数日後、女の子が生まれた。
女は諸手を挙げて喜んで、しきりにシロにお礼を言った。
子供が死んでいたことは黙っていた。
「あの、神様。この子に名前をつけてやってくださいませんか?」
名前には大きな意味があると愛する彼女が言ってたことを思い出し、彼は真剣に悩んで名付けた。
『宝(タカラ)』と。
後にこの時の子供はこの名前をずっと大事にし、偽名に宝と同じ意味を持つ玉をつけたこともあったという。