妄想世界に屁理屈を。


“気がついたら”

私は朱い体で存在していて。

“気がついたら”

私は神様で。

“気がついたら”

火の能力を手にしてて。

“気がついたら”

私は不死鳥で。

“気がついたら”

私は私だった。



「……」

物事には、起源がある。

歴史や流れ、存在理由があるはずなのだ。


それが、私はない。


大した役目もなく、プログラムもなく。

なぜか“気がついたら”いて、神様だった。

アカネさまから出会った時からなぜか神様で、元からそうであったかのように火への耐性や不死であった。



「……なにを、知ってるの?」


私にお父さんやお母さんはいるのかな。
ううん、もしかしたらなにか役目があるのかもしれない。


やらなきゃならないことがあって、放棄してるのかも。

「教えて、知ってるなら一一」


今まで考えないようにしていたけど。


とても怖い。


いちゃいけないような気がするような、そんな怖さ。

だからこそ嬉しかったんだ。


アカネさまという居場所ができて。

『ただの子供』のような扱いを柚邑にしてもらって。


「あなたにはわからないでしょうね。海の神というちゃんとした役目を本当のお父さんからもらえたあなたには」


この、恐怖は。


「進路は自分で作るものとかいうけど、自分が何かもわからない私がうかうかとそんなことしていいわけないじゃない。それに一一与えられたいのよ、甘えたいの」


生まれたことすら思い出せない。


私は、ずっと1人だった。
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