妄想世界に屁理屈を。


だから畏れ多くも家族としてみて頂いてることが死ぬほど幸せで、嬉しい。

不満はない。

されど。

「私に始まりがあるなら、お父さんやお母さんがもしいるなら一一おしえて」

もし、本物がいるなら。

その時こそ本当に甘えられる。


「……チビ、お前本当にチビなんだな」


「だ、黙れ!知りたいだけだもん!」


「いーや。わかるよ。母親っちゅーのは、見たことなくとも会いたいもんだよ」


にこり、やけに優しくそいつは笑って。


「教えてやるよ。ちょうど時間だしな」

「本当!?」


嬉しさで顔を上げた、その時だった。

彼がそっと、私の額に触れたのは。


「……え、」


そして、熱の塊が入ってくる。

「う、くぁあああああああっ!!」


体の中から熱くなり、体を震わせる。


熱さからの痛みが半端じゃない。


絶叫して逃げようともがくも、髪の毛が邪魔して動けない。


霊力を注がれているのだ。


「な、んっ……!」


そして気づく。

髪の毛が、淡く光っていることに。


真っ白な髪の毛が、まるで電気のように。


そしてそれは、私の体に入ってきた。



ゆっくりと、溶け込むように。



否一一馴染むように、やけに心地よく。



「あっ……あっ、なに、こっ……」


「どーだ?還ってくぞ一一てめぇに」


え?

痛みのあまり薄れていく意識の中で、私はそんな言葉を聞いた。


還って、いく?


私が、私に?



「時=不死っちゅーのは、不憫だなぁ一一同情すんぜチビ」


優しく、肉食獣のように微笑みながら。



「ああちがうか、今は一一永か」


目を閉じるその間際。

視界に舞う白髪が、やけに懐かしく感じた。


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