妄想世界に屁理屈を。


「ちょっ…いったん落ち着こう!」


尊厳が失われ、新たな性癖の扉が開かれる前に止めさせなければ。

女は意外にも素直に応じ、ピタリと暴行が止む。

しばしの沈黙を破ったのは、のそのそと起きた俺だった。


「えと、君は誰?」

「……あんたは?」

「俺は山城柚邑(サンジョウ ユオウ)」

「わー変な名前」

「ひど!父さんと母さんにあやまれ!!」

思いっきり馬鹿にされてカチンときた。

地味に傷つくから!
両親に謝れ!
ていうか俺が嫌いなだけだろ!

怒ってると、女は自らを指さした。


「私はアカネ。愛称はアカネ様な」

「名字は……年は?」

それによって呼称を決めてやる。
見た目ではたぶん高校生くらい。

だから、先輩後輩で様付けは決まるのだ(高校生の常識)


「年?0歳」

やつはあっけらかんと言い放った。


「……はあ」


どうやら頭のおかしな方らしい。


「ちょっ…本当だぞ本当!一昨日生まれたばっかりなんだから!」

「生まれたとか…なんなんだよ…」


無視して飛んだ帽子を探すことにした。
あの帽子は見つけないと…。

霧に包まれた山を目を凝らして見る。


「はあ…ん…はあ」
「ん?」


振り向くと、苦しげな彼女──アカネがいた。

地面に手をついて座り込んじゃって、呼吸がしにくそうだ。
いきなりどうしたのだろう。


「はあ…はあ…くっ…ぅ」


酸素を求めて喘ぐ姿は尋常じゃない。



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