妄想世界に屁理屈を。
「……え、」
事態に頭が追いつかない。
髪の毛は白いが、顔立ちは完全にスズだ。
目は固く閉じているが、今にも「触らないで人間!」とか言いそうである。
「スズ……!!!!」
驚いて揺さぶる。外傷はない。
「スズなのか!?」
鸞さんが俺の声に気づいてこちらに走ってくる。
「髪の毛が……」
「鸞さんこれっ」
合体のせいでこうなるのか?
「いや、我ではない。合体は鳳凰にしか作用しないから、眷属には力は……」
そりゃそうか。じゃあ何故、なぜ。
鸞さんが顎を抑え、その白髪に触れる。
苑雛くんの力も取り込んでるから、もしかしたら原因を探してるのかもしれない
「……なにか、まざって……同化してる?」
呟くようにそういった。
「その通りだ」
答える声に振り向くと、赤龍が下に降りてきて歩み寄ってきていた。
「先程の龍は彼女を元に作ったものだ」
「スズをもとに!?」
思わず叫んでしまった。
倒してしまった、だから目を開けないのか?!
「なんでそんなこと」
問うたが、彼は答えることなく、カッカッカッと靴を鳴らして、ヒラヒラと赤を基調とした着物を翻して歩み寄ってくる。
「鸞、といったか。よくやったな。試験をよくクリアした」
にこりと美しく笑む。
警戒していた鸞さんは少し嬉しそうな顔を見せて、それから自慢げに。
「ああそうだろう、誇り高き黒龍の子供として我々は着々と跡を継ぐ準備を……」
「ああ本当に、ご苦労だったな」
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
赤龍が何やら手を振った、それしか、俺には見えなかったのだから。
刹那、血飛沫を上げてゆらりと倒れ込んだ鸞さんが、理解出来なかった。