妄想世界に屁理屈を。
「ああそうだ、それが正当というものだ」



赤龍は、アカネに似た朱色の長い髪を指で撫でながら。



「鳳凰の試作品とは言え、生前意思のある白龍が手ずから作りし朱雀。ずっと鳳凰の影となっていたお前も最高神になれて気が晴れよう?」



俺の涙がスズの額にぽつりと落ち、気だるげに起きる。


白いまつ毛をゆっくり開かせ、彼女は目を覚ました。

「スズ!!!」


「全部聞いてたわよ…」


スっと、よたつきながらも俺の腕から抜けて赤龍の元へ足を向かわせる。



「私が最高神…だって?」


「ああそうです、貴方様こそがその美座にふさわしい」


赤龍がうやうやしくスズにかしずき、喜びの声を上げる。


「私が唯一持っていた白龍の遺産、髪の毛を増量するだけし、貴方様に注入いたしました。これでもう、神格ともども貴方様は最高神です」



「だからこんな髪の毛なのね」



「お気に召しませんか?しかしあの見た目のおかげで貴方様は迫害を受け…」



「そうだね。辛かったよ。人間なんてみんな大嫌いだって思ってた」



赤龍から、絶命した鸞さんの元へ向かう。


悲しそうに頭を撫ぜて。


「でもね、鳳凰の皆様が居場所をくれて、柚邑に会えたからーーそんなに、悪くないなって思ってる」



スズの最大のコンプレックスの見た目。


彼女はそれを今、乗り越えた。




「鸞様にこんなことして、絶対に許さない」





スズはそう言うと、首の糸からハサミを取りだした。




そして、ジョキンジョキンと髪の毛を切っていく。





「な、なにしてんのスズ!」



無言で切っていき、引きずるほど長かった白髪はとうとうボブヘアにまでなってしまった。





そして切った髪を、鸞の上にドサッと置く。




「神様、どうか…」





彼女の神様である、ぐったりと血を流したまま倒れている驪さんをちらりと見ながら。






「白龍の霊力よ!どうか!鳳凰を救って!」







祈るように叫び、その瞬間、髪の毛が光った。



弾くように光り輝き、溶けていきながら鸞さんに同化し、やがて分離しーー光り輝く4つの塊となった。




「あっ、あ…」





泣くことしかできてなかった俺は、目の前の光景を信じられずに見ていた。







鳳凰4人は、スズの髪の毛の力により見事復活した。








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