妄想世界に屁理屈を。
光が降り注ぐその場所には、竹と、手のひらほどの大きさの竹の実がなっていた。
「これが本当の異界…!」
鸞さんが息を飲む。
新緑に湖、そのあまりに美しい光景に、誰もが言葉を忘れていたが。
「ちょっとぅ、みんな何のために異界に来たか忘れちゃったのォ」
空気を切り裂くオカマが、みんなの肩を押した。
そうだ、俺たちは竹の実がほしくてこの異界に来たんだった。
“柚邑。行こう”
アカネが体の中に入り、そう言う。
湖で足をつけると、なんと沈まず、俺は初めて水の上を歩くというナウシカな体験をした。
“これは全部霊水なんだ。お父さんの井戸に繋がってる”
陸地までたどり着くと、思ったより高い高さに竹の実があることに気づいた。
そこら辺の木の棒とかでつついてみようとするも、届かない。
つ、詰んだ。
途方に暮れて座り込んでると、その様子を見たのか黄龍さんが飛んできてくれた。
「んもう、なにしてんのよォ!」
例のごとく俺を軽々と持ち上げ、竹の実まで案内してくれた。
“本当の竹の実とはちがうんだぜ。霊力がちがう。
さあ食ってくれ柚邑!”
竹の実を二個もいで、黄龍さんにおろしてもらう。
「さっさと食べちゃいなさいなァ」
ぱくっとかじり、体が暖かくなるのを感じる。
二個目を食べはじめたあたりでは酔ったような感覚になり、ふらふらとしはじめーー意識を失った。