こんにちは世界
平凡




カッカッカッ…とチョークと黒板がぶつかる音と、文字を書くときの擦れる音だけが教室に響く。



「…と、こうなる訳ですよ。そしてここにこれを代入して…」



数学の授業はいっつもなに喋ってるかわかんねーしつまんない。皆頭伏せてて夢の世界だし、俺だって今こうして寝ようとうずくまって目を閉じてる。でもだからって岡本(先生)も起こそうとなんかしないしこれが当たり前って感じ。

まーさっきまで保健室居たから寝れないんだけど。



ぴこん



静まり返った教室に響き渡った携帯の音に、俺は顔を上げた。

あー、あいつ今日はもういるんだなんて、視線を左前に向けた。

いつも携帯の音切らない馬鹿は黙々と何事もなかったみたいにゲームに取り掛かってる。先生も今更のことだから注意することなくそのまま授業を続ける。


一生懸命ゲームやってる背中が面白くて消しカスを投げてみた。

カスがあたるとぴくんとして、茶色くてくるくるウェーブした髪を揺らして振り返る。そして俺の顔を邪魔すんなみたいな目で見てきた。







「ばーか」







そいつにしか聞こえないくらいの声で言って、にししって笑ってやると、色素の薄い目をむっとさせて前を向いてしまった。

するとすぐにLINEがきた。




『シネカス』










こんな奴が俺の好きな人、

泉ツバサです。






< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop