こんにちは世界
平凡
カッカッカッ…とチョークと黒板がぶつかる音と、文字を書くときの擦れる音だけが教室に響く。
「…と、こうなる訳ですよ。そしてここにこれを代入して…」
数学の授業はいっつもなに喋ってるかわかんねーしつまんない。皆頭伏せてて夢の世界だし、俺だって今こうして寝ようとうずくまって目を閉じてる。でもだからって岡本(先生)も起こそうとなんかしないしこれが当たり前って感じ。
まーさっきまで保健室居たから寝れないんだけど。
ぴこん
静まり返った教室に響き渡った携帯の音に、俺は顔を上げた。
あー、あいつ今日はもういるんだなんて、視線を左前に向けた。
いつも携帯の音切らない馬鹿は黙々と何事もなかったみたいにゲームに取り掛かってる。先生も今更のことだから注意することなくそのまま授業を続ける。
一生懸命ゲームやってる背中が面白くて消しカスを投げてみた。
カスがあたるとぴくんとして、茶色くてくるくるウェーブした髪を揺らして振り返る。そして俺の顔を邪魔すんなみたいな目で見てきた。
「ばーか」
そいつにしか聞こえないくらいの声で言って、にししって笑ってやると、色素の薄い目をむっとさせて前を向いてしまった。
するとすぐにLINEがきた。
『シネカス』
こんな奴が俺の好きな人、
泉ツバサです。