シンデレラは夜も眠れず
6、ハッピーウェディング
バージンロードを兄と歩く。
つい最近までは、何度も何度も夢に見ては諦めていた。
愛人の子だから幸せな結婚など出来ない。ずっとそう思っていた。
だが、私は今憧れの純白のウェディングドレスを着てこうして立っている。
ここは今滞在しているホテルの中にあるチャペルだ。
心配事がなくなって精神的に楽になったのか、体調は東京にいた時と比べるととても良くなっていた。
そんな私の様子を見て、彼はこの結婚式を準備した。
内輪だけの式だ。
兄と春香と京都にいた美樹は、建留さんに呼ばれて昨夜久米島に到着したそうだ。
私が朝起きると、ここ数日恒例の医師の診察が始まり、異常がないとわかると建留さんが純白のドレスを持って現れた。
兄や春香や美樹も一緒に現れて祝福の言葉をくれた。
このドレスは建留さんの友人がデザインしたプリンセスラインの綺麗なドレスで、露出も少なくみんなとてもキレイだと褒めてくれた。
私の視線の先には建留さんがいる。
光沢のあるグレーのタキシードをモデルのように着こなした彼は、誰が見ても格好いい。
一週間前は結婚するなんて考えてもいなかった。
ドレスまで用意してくれてたなんて建留さんには本当に愛されてたんだと実感する。
ドレスだけじゃない。
彼は家まで購入していたのだ。
庭付きの洋館でまだ建設中だが、出産前には完成するらしい。
子供部屋などのインテリアは私に任せると言ってくれたので、仕事を辞めた私にはとても嬉しかった。
もちろん、体調優先と釘を刺されたけど。
「体調は大丈夫か?身内だけの式だし、辛かったら遠慮せずに言えよ」
兄がそっと耳打ちする。
同じ事を今朝建留さんにも言われた。
本当にこの2人は、性格は全く違うのに私にはすごく過保護だ。
「心配性ね」
思わず苦笑する。
「大丈夫よ。今日は吐き気もないし、落ちついてるの」
兄の腕に手をやり、一歩ずつゆっくり進む。
気をつけないとドレスを踏んで転びそうだ。
建留さんは、そんな私を優しく見つめている。
「もう泣かすなよ」
兄は私を建留さんに託すと、自分の結婚式でも泣かなかったのに少し涙目になっていた。
そんな兄を見て建留さんは、悪魔のような微笑を浮かべこう告げた。
「違う意味でならあるかもしれないけど」
「お前は!」
兄の拳がブルブルと震える。
「ちょっと恭介!綾乃の大事な式よ。何挑発されてんの!」
逆上する兄を春香がいさめ、目の前にいた神父がコホンと咳払いをした。
「あなたは健康な時も病の時も貧しい時も富める時も……愛する事を誓いますか?」
「誓います」
何かを噛み締めるように、建留さんは一語一語はっきりと口にする。
私の番になると、彼は私を見守るような優しい眼差しで私を見つめてくる。
「誓います」
指輪交換をして誓いのキスをすると、兄の「長すぎ」というぼやきが聞こえてきた。
そんな兄に見せつけるように、ちょっと熱っぽいキスをすると建留さんは私を抱き上げた。
「外野は無視してこのまま部屋でゆっくり過ごそうか?」
「でも、これ美樹にあげたいの」
「いいよ」
「美樹、受け取って!」
少し式の進行を無視して強引に事を進めたけど、私はとても嬉しかった。
「腹黒王子と幸せにね!」
ブーケを受け取った美樹は、意味深な言葉を投げる。
腹黒って?
頭の中に?マークが浮かんだが、いつの間にか建留さんに部屋に連れて行かれ、その後はずっと2人でベッドで過ごした。
後で知ることになるが、結婚式の写真は清水さんとなぜか司さんが撮っててくれたらしい。
「お腹の子が妬くくらい、今のうちにいっぱいデートして、2人の写真もいっぱい撮ろう」
私の体中にキスを降らしながら建留さんは呟く。
彼の温もりに包まれて今日も私は安眠する。
「愛してる、綾乃」
それは彼だけが与えられる魔法の言葉。
甘美で優しい夢に包まれて眠り、そして朝になると愛しの旦那さまのキスで目が覚める。
「おはよう、奥さん」
そんな格好良くて優しい旦那さまに私は毎日恋をする。
つい最近までは、何度も何度も夢に見ては諦めていた。
愛人の子だから幸せな結婚など出来ない。ずっとそう思っていた。
だが、私は今憧れの純白のウェディングドレスを着てこうして立っている。
ここは今滞在しているホテルの中にあるチャペルだ。
心配事がなくなって精神的に楽になったのか、体調は東京にいた時と比べるととても良くなっていた。
そんな私の様子を見て、彼はこの結婚式を準備した。
内輪だけの式だ。
兄と春香と京都にいた美樹は、建留さんに呼ばれて昨夜久米島に到着したそうだ。
私が朝起きると、ここ数日恒例の医師の診察が始まり、異常がないとわかると建留さんが純白のドレスを持って現れた。
兄や春香や美樹も一緒に現れて祝福の言葉をくれた。
このドレスは建留さんの友人がデザインしたプリンセスラインの綺麗なドレスで、露出も少なくみんなとてもキレイだと褒めてくれた。
私の視線の先には建留さんがいる。
光沢のあるグレーのタキシードをモデルのように着こなした彼は、誰が見ても格好いい。
一週間前は結婚するなんて考えてもいなかった。
ドレスまで用意してくれてたなんて建留さんには本当に愛されてたんだと実感する。
ドレスだけじゃない。
彼は家まで購入していたのだ。
庭付きの洋館でまだ建設中だが、出産前には完成するらしい。
子供部屋などのインテリアは私に任せると言ってくれたので、仕事を辞めた私にはとても嬉しかった。
もちろん、体調優先と釘を刺されたけど。
「体調は大丈夫か?身内だけの式だし、辛かったら遠慮せずに言えよ」
兄がそっと耳打ちする。
同じ事を今朝建留さんにも言われた。
本当にこの2人は、性格は全く違うのに私にはすごく過保護だ。
「心配性ね」
思わず苦笑する。
「大丈夫よ。今日は吐き気もないし、落ちついてるの」
兄の腕に手をやり、一歩ずつゆっくり進む。
気をつけないとドレスを踏んで転びそうだ。
建留さんは、そんな私を優しく見つめている。
「もう泣かすなよ」
兄は私を建留さんに託すと、自分の結婚式でも泣かなかったのに少し涙目になっていた。
そんな兄を見て建留さんは、悪魔のような微笑を浮かべこう告げた。
「違う意味でならあるかもしれないけど」
「お前は!」
兄の拳がブルブルと震える。
「ちょっと恭介!綾乃の大事な式よ。何挑発されてんの!」
逆上する兄を春香がいさめ、目の前にいた神父がコホンと咳払いをした。
「あなたは健康な時も病の時も貧しい時も富める時も……愛する事を誓いますか?」
「誓います」
何かを噛み締めるように、建留さんは一語一語はっきりと口にする。
私の番になると、彼は私を見守るような優しい眼差しで私を見つめてくる。
「誓います」
指輪交換をして誓いのキスをすると、兄の「長すぎ」というぼやきが聞こえてきた。
そんな兄に見せつけるように、ちょっと熱っぽいキスをすると建留さんは私を抱き上げた。
「外野は無視してこのまま部屋でゆっくり過ごそうか?」
「でも、これ美樹にあげたいの」
「いいよ」
「美樹、受け取って!」
少し式の進行を無視して強引に事を進めたけど、私はとても嬉しかった。
「腹黒王子と幸せにね!」
ブーケを受け取った美樹は、意味深な言葉を投げる。
腹黒って?
頭の中に?マークが浮かんだが、いつの間にか建留さんに部屋に連れて行かれ、その後はずっと2人でベッドで過ごした。
後で知ることになるが、結婚式の写真は清水さんとなぜか司さんが撮っててくれたらしい。
「お腹の子が妬くくらい、今のうちにいっぱいデートして、2人の写真もいっぱい撮ろう」
私の体中にキスを降らしながら建留さんは呟く。
彼の温もりに包まれて今日も私は安眠する。
「愛してる、綾乃」
それは彼だけが与えられる魔法の言葉。
甘美で優しい夢に包まれて眠り、そして朝になると愛しの旦那さまのキスで目が覚める。
「おはよう、奥さん」
そんな格好良くて優しい旦那さまに私は毎日恋をする。