わきみち喫茶
「失礼を承知でお聞きしますね、“何か悩み事がおありですか?”」
思わずハッと目を見開く。
その様子に女性は優しく目を細めた。
「突然すみません、驚かせてしまいましたね。
もちろん、聞き流してくださっても構いませんので」
本当に不思議な人だった。
静かにカップを引き寄せ、流れるような手つきで残りのお茶を注いで行くその横顔から目が離せない。
「このメニュー…」
目の前に差し出されたカップには、先ほどよりも少し色が濃くなった琥珀の液体。
「あなたは、コーヒーではないのか?と聞きましたね」
小さく頷くと女性がにっこり笑った。
「実はわたし、昔からコーヒーが飲めないんです」
喫茶店の従業員がコーヒーを飲めないとは少し驚きだった。
「それで思ったんです、わたしのようにコーヒーが飲めない方のために、何か特別なメニューが作れないかなって」