召しませヒメの甘い蜜

神野にとっての男女関係とは、こっちが黙っていても向こうから必ずといってアプローチされるものだったから。

そんな受身の姿勢ばかりが身について、あれ程あっさりと引かれると反対にどこか物足りなくて。


(もう一度会えるだろうか?)


そんな気持ちを自分が持つこと自体に慣れていなくて。

この気持ちがいったい何処から来るのかも見当がつかず。

許婚の為に自分で料理を作ってあげたいと、花嫁修行を宣言して姫野が彼の前に立ったことも忘れて、神野は彼女との再会を心待ちにしていた。


思い出すのは、気持ちの良い返事と、料理に取り組む真剣な眼差し。

傷だらけの指先。

神野を見上げる真っ直ぐな眼差し。

上気して赤らんだ頬。

可愛らしい笑顔。


(もう一度会いたい……)


そしてその期待は、思わぬ形で実現されることとなる。
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