召しませヒメの甘い蜜

<ドン!>

「なんで直ぐに断らなかったんだ!」

<ドン!>

「結局、俺にも欲があるってことか!」

ピザの生地を練りながら、神野は自分の優柔不断さに怒っていた。

<ドン!>

「俺は逃げてただけなのかっ!」

運もコネも実力の内。

そう割り切っていた筈の自信が揺らいでいた。


『……総一郎さんの為に、自分で料理を作って差し上げたいと思っています』


「なんでここで総一郎が出てくんだよ!」

<ドン!>


(まさか……、な……)


山上総一郎と姫野麗の年齢差を考えれば、それは有り得ない想像の筈だった。
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