召しませヒメの甘い蜜
麗はまだ、婚約者である山上総一郎氏に会ったことがない。
彼は多忙極まりなく、一年先までのスケジュールが一杯なのだ。
だから結婚も、まとまったスケジュールの空きができない限り実現しそうにない。
なんとも狐につままれたような話だ。
だからと言って、手放しで自由を喜んでいるわけにもいかない。
何時、結婚が具体化しても良いように、常に用意万端整えておくべきだろう。
一通りのビジネスノウハウ学んだ麗は、次なる花嫁修業のステップへと進むことにした。
夫の仕事の苦労は少しだが理解できるようになった。
夫の身体を気遣う妻でありたい。
この思いを実現するため、彼女は料理を学ぶことに決めた。
料理なんて生まれてこの方、家庭科の実習でしかしたことがない箱入り娘。
それでも、憧れの「ボーノ・ボーノ」で学べると聞いて、速攻で料理教室へ申込みを入れたのだ。