召しませヒメの甘い蜜


後から調べてわかったことは、この店のオーナー件シェフはまだ年若いということ。


それ故、世間の評判も賛否両論。

シェフの料理を手放しで褒める肯定派と。

その成功を妬み、心無い野次を飛ばす否定派。


でも、麗にとって、彼は幸せの料理を作る魔法使い。


その作り手に、直に触れることができるなんて夢見たいだと思った。


花嫁修業の一環をしとして入った料理教室ながら、彼女は彼に会うのを楽しみにしている自分に戸惑った。


婚約者のいる身で不謹慎ではないか。

本来の目的を逸脱してはいないか。

あくまで花嫁修業の一環と心得よ。


麗は自分を必死に戒めて、納得させた。

神様だって、それくらいの戯れは許してくださるだろう。


お目付け役の南野を介助役として巻き込んで、

夢一杯で臨んだ教室だったのだ。
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