君の背中を見つめる恋
香乃の視界が歪む。

中山くんの大切なものだと
分かってるから、

尚更渡せなくて…


「ごめん、あたし先に帰る!」

「へ、香乃!?」



急に走り出した香乃に

夕里が追いかけようとした
足を止めた。


追いかけて、
あたしは何て声をかけるの…


「………っ」


香乃が夢中で廊下を走った。

改めて自分の
醜い気持ちを思い知って。


こんな自分が嫌で、

剛志くんに対して
返事ができない自分も嫌で。


あたしは

本当に醜い───…

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