君の背中を見つめる恋
だけど夕里は
心配してくれてるんだよね。


「夕里、好きー!」

「ちょ、そのベトベトの手で抱きつくな」


夕里に抱きつくと
ベリッと引き剥がされた。


その様子を瞳に映す、

────中山の目。


『好き、なんだけど……』


今でもよく覚えてる。

本当はあの時、


『俺、』

伝えたいことがあった。


だけど今更掘り返すのは
仁科を傷つけるだけ…

伝えたとしても、


────傷つけることに変わりはないと思うから…


だったらもう、

あの事は昔のことだって
そうやって流すのが

俺たちのためだと思った。
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