君の背中を見つめる恋
ニコッと笑う阿部くんに、

あたしはなぜかホッとした。


「じゃぁ、一緒に行こうよ」

「うん」


香乃と阿部がゆっくりと歩き出す。


それを教室で鞄を持ったまま見つめる、

────中山の瞳。


「………」

「中山くん?早く行かないと遅れるよ」

「あ、ああ…わり」


中山が鞄を持って教室から出る。


「………」


鞄を握りしめる手に力を入れて、

香乃たちと反対方向へ
歩き出した。

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