この空の下で
「今までの思い出重ねていくたびに、思い出がシャボン玉みたいに膨らんできたけど、簡単に割れちゃうのかな…」

「馬鹿、なんでそんなこというのよ。ここで終わりにしちゃったら、今までのが何なのよ。なんでここでやめなきゃならないの。なんでそんなことを言うのよ。ホント、アンタって無神経。馬鹿」

 オレの腕に抱きついた法月は、また泣き出した。

 なぜあんなことを言ったのであろうか。今頃後悔していた。本心ではこんなことを言いたくはなかったのだが、彼女と離れてしまうことで、気が動転していた。落ち着いてなかったのは、自分のほうではないか。

 オレは法月の左肩に手を回し、自分のほうに抱き寄せた。

「悪い、ゴメン。オレ…おかしくなってた。ホントにゴメン」

 法月の体を優しくなでながら、オレは自分の心を悔い改めた。そしてオレの手は肩から彼女の頭に移った。

「ゴメン…ホントにゴメン…」

 オレの手は止まり、二人は頭をつけた状態でしばらくそこに座っていた。

 二人は時間を忘れ、自分の思い、そして互いの気持ちについて考えた。いつの間にか、二人は脳裏に焼きついている二人で過ごした思い出を回想していた。

 二人は心が通じ合っているかのように、顔を互いにゆっくりと見合わせた。


 そしてその後は、人生でもっとも大事な青春の一ページが、二人の心にずっと残ることになった。一生忘れることのない、誰にも言えない、そしてもう二度と繰り返すことのない一ページを、心の中に綴じこんだ。
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