この空の下で
 父さんは話し終えると、世界中の幸せをつかんだような顔をした。

 僕はそんなことにかまわず、疑問を持ったような声で聞いた。

「なんか悪いんだけど…それでおしまい?」

 当たり前だが、父さんはきょとんとした顔をした。そして厳しい口調で言った。

「どうした。なんか不満か?」

「うん」

 父さんはいかにも嫌そうな顔をし、恐る恐る僕に質問をした。

「もしかして…その後のことも聞きたいのか?」

「うん」

 僕は即答した。誰だって最初を聞いたら最後も聞きたいものだ。そして父さんは少し照れくさそうに言った。

「それだったら、もっと簡潔に話せばよかったな」

 父さんは優しく微笑んだ。そして仕切り直すかのように、大きなあくびをした。

「その後か…どんなんだっけなぁ…


「じゃあ…元気でな」

「雄治も…忘れんな」

「ああ、忘れないさ、一生」

 彼女は最後に微笑を残して去っていった。しかしその笑顔の裏には、泣いている彼女がいる。どんなに隠そうとしても、オレには分かる。
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