この空の下で

　私は目を覚ました。

　いつの間にか寝ていたようだ。昼寝ではないのだが、なにかが私を夢中へ引きずり込んだのだ。

　目を開けた時、外は火が燃えるように赤くなっていた。時間は過ぎるのが早いと思った瞬間であった。さっきはあんなに長く感じられたのに。時間は尊い。私はまだそのことに気づいていなかった。

　あぁ、今も地球は回っているんだろうな。

　私はあまりにも単純明快で、くだらないことを考えていた。

「では、さようなら」

　下の階から柔らかな声が聞こえた。

「あぁ、じゃあな」

「さようなら」

「元気でね」

　ドアは軋みをあげてゆっくりと閉まった。そして二人の足音は居間に消え、もうひとつの足音はテンポよく階段を上がった。

　その音に反応した私は、すぐにベッドから体を起こし、荒い足音で部屋を出た。そして要を捕まえて、部屋に引きずり込んだ。

「何だ」

　要は今の状況に、かなり翻弄されており、理解しようと努力していた。

「要、何話してたの」

　ベッドに座り、今までたまっていた鬱憤をぶつけた。

「何話してたって…世間話ぐらいだけど…何で」

　やっと出てきた一言のように、口から自然に漏れた。もちろん無表情で、その場に突っ立ったままでだ。

　私は要の言葉を聞いて、さらにイラついている。そして、自分の感情を制御できないまま、感情をあらわにした。

「そんなことじゃなくて、分かるでしょ、あんた。もう子供じゃないんだし…」

「子供だよ」

「何言ってんの。大人と同等に話せるくらいになったら、もう大人でしょ、普通に考えたら」