この空の下で
「で、なんで私がこんなところにいるの?」

 聖子はぶっきらぼうに尋ねた。

「まぁまぁ、いいから気にしないで」

「気にしないで…じゃないわよ。なんで騎馬戦の大将なのよ」

「聖子が話に参加しなかったから。ドンマイ」

 聖子は幸恵と私と曾我部さんが組んだ手の上に乗っている。しかし聖子はまだ喚いていた。

「別に私じゃなくてもいいじゃない。なんで私なの」

「アンタ、意外と運動神経いいじゃん。しかも、何かやってくれそうだし」

「何それ。私、大して…」

 喚いている聖子をほっといて、始まりを告げる、ホイッスルが鳴った。

 いよいよ始まった。

 それぞれの馬は勢いよく前進し、これから戦場になるであろう、グラウンドの中央へ走った。皆、ものすごい形相、血眼、野生に目覚めた心を持ち、そのおかげでこれから交戦するのが嫌になってくる。赤と白の帽子が宙を舞い、その下で馬から落とされる者や、手で一生懸命にあがいている者がいた。

 そういえば、私たちと側近の一組はまったく動いていない。大将がいなくなれば、騎馬戦は終わるので、動かない方がいいという、側近の前原さんから聞いた戦略である。しかし、動かないというのもつまらない。

 そんなことを考えているうちに、中央の戦いは終わり、こちらに敵が向かってきた。相変わらずの形相であったが、交戦でかなり疲れている。しかし敵は大将を入れて、残り三組であったので、こちらが絶対的に不利なはずだ。

 こんなところで待っているのは意味がないので、私達の馬と前原さんたちの馬は、ゆっくりと前へ出た。

「古葉さんたちは左をお願い。私たちは右の二組をくい止めるわ」

 そう言うと、前原さん達の馬は左へと向かった。こんなところで抵抗してもしょうがないので、私達はその指示通りに動いた。

 そしてこちらは一対一になり、地面をさみしく風がこする一方、左方では激しい抗戦の砂煙が舞っていた。

 前触れもなく突然、相手の馬はこちらに突っ込んできた。

「うそ、どうすればいいの」
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