この空の下で
「望月さん、やったわ。私たち、勝ったのよ」

 前原さん達ははしゃいでいたが、私たちはボーっとしていた。一体何が起こったのか、まるっきり私たちは理解していない。しかし、私はすぐに気付いた。大将がいなくなれば、騎馬戦は終わる。その言葉は、頭の中で何度も繰り返された。そしてやっと実感が湧き始めた頃、聖子をゆっくり下ろし、聖子に抱きついた。

「聖子が捕った子、あの子は大将だったのよ」

「え、そうなの」

 聖子は少し恥ずかしそうであった。背中が熱かったのですぐに分かった。

「ね、もう、深雪」

 聖子は照れていたが、その声には少しうれしそうな感情がこもっていた。

 幸恵は前原さんと遠くの方ではしゃいでいるようであった。


「ねぇ、深雪。ちょっと話があるんだけど…」

 騎馬戦を終えた後、グラウンド付近に設置されている水飲み場で手を洗っていた。

「え、何、話って。聖子から話すなんて珍しいね」

 大抵の人は教室に戻り、水飲み場では私と聖子の二人だけとなっていた。幸恵はというと、前原さんたちと先に行ってしまった。

 突然辛い顔をした聖子は、ゆっくりと静かに話した。

「私…私立の中学校に行くの」

「えっ」

 私はあまりにも突然のことに驚いた。まさか彼女の口から、こんな言葉がいきなり出てくるとは思わなかった。私はただ、唖然としていて、頭は真っ白であった。

 そして聖子は目を真っ赤にした。

「もう会えないかもしれないけれど、私、深雪のことを一生忘れない」
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