この空の下で
 学校から家までの道中、それはあっという間で、もう三本の分かれ道に来てしまった。

 そして、私達は向かい合い、互いの顔を見つめ合った。そして、いつの間にか、彼女の心と通じ合っていたのが、今ここで分かった。

 彼女の感情、欲望なんかが分かるのではなく、彼女の心中が分かる。

 今は友達としてではなく、共に生きる一人の人間として認めている。友達とはただの付き合いの上で成り立つものではない。一生を生きるうえで、重要になる人ではない。自分の欠点を、満たす人でもない。ただ、一緒にいるだけで、安心できる人だ。友達とは、使い捨てのカメラではない。私はそう思う。

 そして別れ際に、私達は握手も抱き合いもせずに、互いの目を見て言った。

「じゃあ、また会う日まで」

「うん、また会う日まで」

 そして聖子は、自分の家に向かって、一本の道を走っていった。しかし、すぐに足を止めると、こちらに振り向いて、大きな声で叫んだ。

「これからもずっと一緒だかんね」

「分かってる」

 私は叫んで答えると、聖子はうれしそうに微笑み、また自分の家に向かって、全速力で走って行った。その姿は後に、大人になるまで見ることはなかったが、寂しくなんかはなかった。聖子はいなくならない。いつも一緒にいる。私が私の心でそうつぶやくたびに、聖子は答えてくれた。

 そして私は、聖子の背中をじっと見つめていた。

 聖子の走る道は、希望と未来の光であふれていた。


 こうして私たちの六年間は幕を閉じた。

 思い返してみれば、この六年間の間に築いた仲間と思い出は、一生忘れることはないだろう。辛いことや悲しいこと、楽しいことや嬉しいことは、写真という名の記録用紙に思い出として残された。

 私の部屋の壁には一枚の写真がある。その写真はみんながつまんなそうな顔をしている集合写真である。しかしその中で、一人の少女は輝いているように見えた。
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