この空の下で
初デート
 この前小学校を卒業したかと思うと、あっという間に中学校の入学式を迎え、それからもう十日が経った。

 友達もでき、学校にも慣れた。勉強も小学校と比べると、一段と難しくなった。そしてそこからいろいろな経験を積むこともできた。なんと言っても一番の収穫は、あらゆる人が小学校からこの中学校に集まっているので、自分の人生観が大きく変わることであった。

 そして僕は、これからこの長い三年間を、この中学校で過ごすことになった。これからどんな青春が待っているのであろう。楽しみだ。


 入学から二ヶ月が経ち、毎朝が憂鬱になる日々が四日続いた。部屋の中がジメジメするし、変に暑いし、何といっても、通学が大変だ。

 僕はいつも通りに制服に着替え、朝食を食べて、歯磨きを済まし、部屋で少しの時間をつぶした。そして憂鬱なシャワーを浴びに外へ出る。そこには自転車が一台しかない。すでに深雪は朝早くから学校へ行ったようだ。というより、同じ家にいるのに、そんなことに気が付かない自分はどうかしている。そんな時、僕は始めて自分の愚かさに笑ってしまう。そして学校まで、憂鬱なシャワーを浴びて通学するのであった。


 学校に着くや否や、背中から靴下までグッショリぬれていて、かなり気持ち悪い。せっかく傘を差してきたのに、まったく意味がない。

 教室に入り自分の席に着くと、持ってきた靴下に履き替え、背中にべったりとくっついているワイシャツを離した。

 外は相変わらず、滝のように猛烈な雨で、雨の向こうが霞んで見えるほどのすごい大雨であった。

 ボーっと外を眺めながら体にためている憂鬱に浸っていると、昔からの幼馴染が話しかけてきた。

「なぁ、要。今度の休みに映画でも観に行かないか?」

「なんだ、英一。お前ずいぶん暇なんだな」

 僕は英一を見ながら嘲るように笑った。

「はっ。オレは頭がいいからな」

「うぜぇ」

 二人は同時にクスクス笑った。

「それで、行けるのか」

「どうだろ」

 僕は時計をふと見た。

「ほら、もう授業始まるぞ。さあ早く自分の席に戻れ」

 僕がそう言った時、教室のドアが開いた。

 すると教室の中は逃げるアリのように、あわただしく動いた。
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