この空の下で
暗い劇場の中、僕らは運よく真ん中の席を陣取り、ようやく落ち着きをとり始めていた。さすが創立記念日で、客は少なく、居心地は最高であった。
しかし映画を見ていると、そんな気持ちも吹っ飛んでいた。さすがにホラー映画は恐い。僕は急に落ち着かなくなった。
そういえば、ホラー映画を観るのは初めてだ。今年中学に入ってから、映画に興味を持ち始めたのだが、ホラー映画には一切、手をつけていなかった。
序盤から中盤に変わってくると、恐怖は増大してきた。自分は見える恐怖なのだが、映画の中の住人は見えない恐怖に襲われている。その恐怖が僕らに伝わってくるのは、人が殺される瞬間だ。ほら、後ろ。そう思って振り向くたびに、絶叫、そして目の前が真っ暗になる。
そして終盤。恐怖はピークを迎えた。
いよいよ最後の一人にされた主人公が殺される瞬間、それは惨殺で、観るにも観ることができなかった。言葉にも表せない、まさに絶句であった。
人に言うのは少し恥ずかしいが、一時目をつむってしまった。そしてその一瞬のことであった。僕は脇の手すりに手を置いているのだが、その右手に何かが包み込んできた。生暖かい。深雪の手であった。その瞬間、僕の体は化学反応が起こったように、急に熱くなった。同時に心臓の鼓動が、徐々に速くなるのを感じられた。何だろう、この気持ち。
僕はゆっくりと目を開け、深雪の方を見た。深雪は歯を食いしばり、目には映画と恐怖が映っていた。毎日この横顔を見ているはずなのに、なぜだか胸の響きは大きくなっていった。
もう映画なんてどうでもいい。こんなところを早く出たい。僕はそう願いながらも、映画を観続けていた。
「どうだった?」
深雪は束縛から解放されたたような顔をした。
「…緊張した上に、なんか、すごく疲れた」
「そうだね」
楽しそうな顔をする深雪をよそに、僕の心は今の空のように雲が覆っていた。
「なんか食べてく?」
「…うん」
立場がすっかり変わってしまった。映画が終わった今でも、僕の胸の鼓動は、変わらず高鳴っていた。
しかし映画を見ていると、そんな気持ちも吹っ飛んでいた。さすがにホラー映画は恐い。僕は急に落ち着かなくなった。
そういえば、ホラー映画を観るのは初めてだ。今年中学に入ってから、映画に興味を持ち始めたのだが、ホラー映画には一切、手をつけていなかった。
序盤から中盤に変わってくると、恐怖は増大してきた。自分は見える恐怖なのだが、映画の中の住人は見えない恐怖に襲われている。その恐怖が僕らに伝わってくるのは、人が殺される瞬間だ。ほら、後ろ。そう思って振り向くたびに、絶叫、そして目の前が真っ暗になる。
そして終盤。恐怖はピークを迎えた。
いよいよ最後の一人にされた主人公が殺される瞬間、それは惨殺で、観るにも観ることができなかった。言葉にも表せない、まさに絶句であった。
人に言うのは少し恥ずかしいが、一時目をつむってしまった。そしてその一瞬のことであった。僕は脇の手すりに手を置いているのだが、その右手に何かが包み込んできた。生暖かい。深雪の手であった。その瞬間、僕の体は化学反応が起こったように、急に熱くなった。同時に心臓の鼓動が、徐々に速くなるのを感じられた。何だろう、この気持ち。
僕はゆっくりと目を開け、深雪の方を見た。深雪は歯を食いしばり、目には映画と恐怖が映っていた。毎日この横顔を見ているはずなのに、なぜだか胸の響きは大きくなっていった。
もう映画なんてどうでもいい。こんなところを早く出たい。僕はそう願いながらも、映画を観続けていた。
「どうだった?」
深雪は束縛から解放されたたような顔をした。
「…緊張した上に、なんか、すごく疲れた」
「そうだね」
楽しそうな顔をする深雪をよそに、僕の心は今の空のように雲が覆っていた。
「なんか食べてく?」
「…うん」
立場がすっかり変わってしまった。映画が終わった今でも、僕の胸の鼓動は、変わらず高鳴っていた。