この空の下で
 それにしても、なぜ周囲はこのように、他人のことになると、こう突っかかってくるのであろうか。楽しいのであろうか。もしくはただの好奇心。

 僕は中学校に入ってから、あまり人が好きではなくなった。人間はいやらしい。それがただ一つだけの理由。小学校の頃はあんなに無邪気であったのに。

 明日になればこれがなくなるのであろうか。僕は布団にもぐりこみ、そればかりを祈っていた。


 カーンと遠くの方で、金属音が聞こえてくる。我が野球部はすでに練習を始めているようだ。先輩らが引退してから、まだ間も経っていないが、練習は慣れてきている。

 それにしても長いホームルームだ。他のクラスはすでに終わって、各部活に向かっているのにも関わらず、自分たちだけが取り残されている。外からは遠くにある山小屋のように、ぽつんと明かりが灯っていることであろう。

 とりあえず、何でこのホームルームが長くなっているかというと、今日は担任が出張していて、代理の担任が運悪く、話の長い学年主任になってしまったのだ。みんなは話が長いので嫌っているが、僕はそうでもない。しかし、この時だけは違っていた。部活に早く行きたいという気持ちだけでいっぱいであった。

「…なので、これからは気をつけてください。はい、では、号令」

「起立、礼」

 みんなは抜け殻のように疲れ果たしていた。やっと終わったという開放感。早く部活に行くぞというやる気が、その裏に隠されていた。僕もやる気に燃えていた。

 そして号令と共に、みんなは外へ急いだ。

 最近、夏は過ぎても、少しばかり暑さは残っていたが、秋を訪れる虫の音と共に、涼しい秋風が吹き始めていた。しかし僕は暑さに耐え切れずに、まだ半袖でいた。

 僕はなるべく昇降口で込み合わないように、後から教室を出た。暗い廊下をゆっくりと歩き、自分の靴箱の前まで来た。そして靴箱に手を伸ばし、靴を取ると、蝶のように一通の封筒がハラリ、ハラリと舞い、床に静かに降りた。

 まず僕は、周りには誰もいないことを確認して、一通の封筒を手に取った。そして封筒の裏表を見た。中を開け、一枚の便箋を広げた。そこには真ん中に二行だけで書かれていた。
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