この空の下で
 上手い具合に言葉は次から次へと出てきたので、自分でも感心した。

 水神も感心したように、深くうなずいた。

「…うん、そうかも。やっぱり…私の要だ」

 そう言うと突然、水神は僕の胸に倒れこんできた。僕はどうすることもできずに、彼女を抱いた。

「好きだよ…要」

 僕の胸は、今すぐにでも破裂しそうだ。しかし、水神が僕の腰に手をまわしている状況から逃げるなんて、無理なことであった。しかも、抱きつかれた勢いで、僕もいつの間にか彼女に手を回していた。

 しかし、こんな格好も良くなくはないと思い始めたのは、しばらく経ってからのことであった。水神を抱いていると、安心する。そしていつしかは、このままでずっといたいと思い始めていた。

 僕らは今どこで、何をやっているかなんて、今にしてはどうでもいい。ただ、このまま時間が止まってほしいと感じているだけであった。

 その翌日、誰かに見られていたらしく、僕らが抱き合っていたという話は、すぐさま広まっていた。しばらくの間は、静かに暮らすことになった。しかし、水神とは部活のない日にだけ、一緒に帰ることになっている。そしてそのたびに、皆からは冷やかされている、という想像をした。

 遠くの方から、高い金属音が聞こえた気がした。
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