この空の下で
難儀な出来事
 受験勉強が本格的になる学年、中学三年生。要は恋に勉強に部活に大忙し。そんな要を後押しするように、私は家でちょっかいをかけていた。要をいじるのは楽しい。すぐに反応してくれる。だが、私も頻繁にはそんなことをしていられない。私も受験生だし、部活も最後だ。まず私は、目の前の事柄を一生懸命に行うことを、自分自身に誓った。


「あーあ、終わっちゃったね、総体。はかないね」

「そうだな」

 私はソファーの上に寝転がり、要と談笑を楽しんだ。

「で、決まったの、どこの高校行くか」

「ん…まだ。お前はどうなの」

「私は…あそこよ。ほら、何だっけ、あそこ。結構、偏差値六十ぐらいのところ」

「え、ウソ。俺も…」

 要は最後まで言い終わらないうちに黙ってしまった。しかし私には、要が何を言おうとしていたのかが分かった。

「へー、そうなんだ」

 それっきり、要は黙ってしまった。自分の都合が悪くなると黙るなんて、子供らしくてかわいい。そんなところが私のお気に入りである。

 しかし、それにしても驚いた。志望校が同じだなんて。今からでも志望校は変更できるが、自分に相応の学校はその一校しかない。他ははるか上、下に位置しているかで、もしくは私立でしかない。

 こんな選択肢しかない私には、今の志望校以外にいくことなんてできなかった。


「…ここで、いいですか」

 重い空気に包まれる三者面談。私立の受験が終わり、ほっと息を入れようとすると、またすぐに公立の受験が待ち構えている。

「はい、いいです」

 私は母さんの顔を見合わせた。

「あとはここに印と、受験料二千百円をお願いします」

 母さんはバッグから印と財布を取り出し、まず財布からお金を取り出した。

「それにしても驚きですよね。要君も同じ高校だなんて」

「そうですね、でも、とりあえず、第一志望が受かってくれるならかまいませんよ」

 やはりそうだ。要も同じ高校を受けるらしい。まさか同じ学校なんて、なんか運命を感じる。
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