この空の下で
「え…なにを」

「俺らの…俺達の本当の親じゃないんでしょ…義母さん…」

 驚くことに、俺は一回もしゃくりを上げなかった。しかし、義母さんも落ち着いている。

「…分かったわ。ついに教えるときが来たわね…」

 一番返って欲しくない答えが返ってきた。

 そして義母さんは落ち着いた姿勢を見せていたが、その裏には泣いているのがはっきり見えた。しかしその目にはまだ、我が子というものが映っていた。

 義母さんはすぐに電話の受話器をとりに行った。

「…もしもし、私、芳江ですけど、古葉雄治はいらっしゃいますか…ええ、そうです…」

 どうやら義父さんに電話をかけているらしい。そして義母さんの声は唇と共に震えていた。

「…雄治君…今すぐ帰ってきて。あのことで…うん…うん、分かった。じゃ、早くね」

 受話器を置くと、義母さんは居間を出た。そして大きな声で、二階に向かって叫んだ。その時、義母さんの背中が妙に小さく見えた。

「深雪、ちょっと降りてきて」

 ドアの音がすると、深雪はすぐに降りてきた。いつもの義母さんの声とは違うのが分かったからだろうか。

 そして深雪は暗い居間に入ってきた。

 深雪はどうしたんだ、という表情でこちらを見た。まだこの状況が把握できないのは当たり前だ。しかし深雪はこの空気を事前から感じ取っていたようだ。

「では…話します」

 泣きながら微笑んだ義母さんは前髪を振り払った。

 深雪も俺の横に腰掛けた。

「では、単刀直入に言います。深雪にはいきなりだけど、あなた達は…私…いえ、私達の本当の子供ではありません。養子です」

 母さんは鼻をすすりながら、一言一言をゆっくりと話した。しかし、そのことに一番驚いたのは深雪だった。

「はぁ?冗談はやめてよ」

 深雪は首を振り、声を震わせた。そして義母さんは変わらない口調で答えた。

「冗談では…ありません。今まで、黙ってて…ごめんなさい」

 深雪は深刻そうな顔をした。そんな深雪にとどめを刺すような一言が、義母さんの口からとんだ。

「しかも…あなた達は…本当の双子ではありません…」

「え?」
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