この空の下で
 俺らは口をそろえていった。そして互いに顔を見合わせ、頬を紅潮させた。それは俺も知らなかった。

 ということは、昔から同棲していたことになる。一緒に風呂に入ったり、一緒に遊んだり、一緒に行動したり、一緒に手をつないで歩いたり。そんなことが脳裏によみがえった。

 そして俺の背中は熱くなった。

 今までの思い出は何だったのだろう。俺は血のつながっていない家族と今まで十五年、暮らしていたのだろうか。深雪と一緒に一つ屋根の下で暮らしていたのだろうか。

 そう思うと、やるせない気持ちでいっぱいになった。

 深雪も同じことを考えているのだろうか。深雪は唇を噛み、眉間にしわを寄せて、体を震わせた。俺と同様、涙を流して、顔は真っ赤だ。こんな事実を目の当たりにすると、誰だって驚く。まして血のつながっていない異性と十五年暮らし、自分は家族ではないと今まで信じてきた母親から言われたら、誰だって驚き、嘆き、羞恥心が生まれる。

 一番身近に、その上一番長く一緒にいた人間は隣にいた。

 俺もその事実を知って、初めて深雪から離れたいと思った。もうこの家には居られない、という気持ちになってしまう。そして積み重なる思いがこみ上げ、そして涙になる。

 すると突然、深雪は立ち上がり、袖で涙をぬぐいながら居間を出た。涙を散らせながらも躊躇せずに、そのまま外に向かって走っていった。

「深雪…」

 義母さんの悔やみが残った。俺の不快感が残った。そして最後に残ったのは、ドアのゆっくりと閉まる音であった。
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