この空の下で
 私の目からは、ぽろぽろと涙が溢れ出ていた。そして一呼吸置いてから、何気ない口調で母さんに聞いた。

「それで、どうなの、調子は」

 母さんは寝返り、反対のほうを向いた。

「…知らない。お休み」

 母さんは鼻をすすった。

 なんか悪い事を聞いたようで、私の気持ちは良くなかったが、今までの疑問がひとつ解けて、なぜだか気持ちはすがすがしかった。

 私は今日たまって、今まで隠されていた疲れがどっと出てきたような気がした。そして私が目をつむると、眠気は夢の中へと誘った。


「…いつから、胸のしこりが出てきましたか」

「分かりません。多分、二ヶ月ぐらい前だと思います」

「困りましたね…今患っているガンは、転移を続けて、腋窩リンパ節…失礼、脇の下、肝臓まで広がっています。このままだと、間違いなく…死ぬでしょう」

「…そうですか」

 私は眠りから覚めていたが、目は開けていなかった。白いカーテンは、光で純白になっていた。うっすらとまぶたを開けてみると、カーテンには隣のベッドで母さんと医師らしき男の影が映っていた。

「驚かないんですね」

「だって、行き着けの病院ですもん。安心しますよ」

「そうですか…」
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